しんどい言うな

 やれやれ・・・。独立したのはアンタの意思。うちの店にくっついてやっていくことを決心したのもアンタの意思。誰も彼もしんどいんや。アンタだけがしんどいわけではない。また先輩である。ケンカした先輩とは別の先輩だ。休みのことでまた文句が出た。4日の某店の店番と私が4日にやすむことを何で言わなかったのかということである。

 私の仕事のスケジュールは店の人間(通称・お姐さんといふ)の管理下にある。全店のパートや従業員の出席状況を把握し、また本店の業務などの都合で、自由に動ける私や後輩のスケジュールを決定する。たとえば休む時などはお姐さんに申請して、そして若主人に申請すするという形だ。私のスケジュールに関して完全に把握しているのはお姐さんである。だったらお姐さんに聞けば済む話なのだ。(もっとも、その日、休みだったのだが。)それに、仮にも店を出た人間である。先輩とはいえ、そこまで管理される必要はないし、正直、いちいち言うのは面倒くさかった。

 「しんどいからオレも休みたいんや!」って独立したアンタがいうセリフじゃぁない。他の独立した先輩たちも(しかもアンタよりずっと年下で)皆がんばっている。店舗を持たないスタイルなので毎日毎日仕入れの市を巡っている。人付き合いも大変だろう。それは私から見ていてもよく分かる。独立することの大変さと、独立してからの過酷さ。身に染みる。

 不器用なのもわかっている。いかつい見た目と強い語気は内面も脆さを隠していることも知っている。そして、経験の長さの割りに業界内で偉そうに言えるのは私しかいないことも。独立には遅すぎる年齢。先立つ後輩の独立。年下の若主人。さまざまな苦労もあるだろう。しかし、もはや性格や姿勢は直すことはできないのか・・・・・・。頼りなげな後輩は確実に追い越すよ? まずはもっとも難しいもののひとつでもっとも役立つもののひとつ、ポーカーフェイスから始めるか。