逝ってくる

 山に行くことにした。なんというか、気分的には最悪だ。一度は社会に敗れさった身。最果てまで行ってみたいと思ったからだ。とはいえ、まさか北極や南極に行ける訳でもない。もっとも身近な異世界・・・・・・高野山奥の院に行くことにした。
 出発は夜の10時も過ぎた頃だった。食料とキャンプ用品を適当に用意し、車で向かう。まずは昔よく行っていたキャンプ場「玉川峡」近辺の青少年やどり村を訪れる。懐かしい山道をグルグルと走って、到着は夜中の1時。誰もいない。川にも魚影がない。ここのキャンプ場&駐車場はお金を取られるので、少し上流の道路脇に駐車して野宿する事にした。
 車内を片付けて寝床を作る。そこそこ広い。外は寒すぎるので中で夜食を作ることにした。換気に注意してカセットコンロで湯を沸かす。即席ゴハンとツナ缶を食べ、コーヒーを飲んで一息。なんとも言えないひと時だ。窓ガラスは曇り、川の音以外何も聞こえない。外界から遮断されている空間。エンジンを切っているため、冷気が深深と染み込んでくる。すでに2時を回っていたので寝ることにした。足を伸ばせないのが辛い。
・・・・・・寒い。寒すぎる。とても寝られない。毛布と寝袋、ジャケットやら何やらを上からかけていても寒い! この寝袋は夏用か?! ああ、これは完全に山をなめてたな。下手したら死ぬぞ、こりゃ。