またもや険悪

 先輩のひとりが嫌いだ。なんでだろう?以前も大ゲンカしたことがある。アンタのヒネこびたトコロが大嫌いだ。我がままだし、僻みっぽいし、良いのは外面だけ。その一見「優しさ」や「気遣い」に見えるものは何?自己満足か?自己欺瞞か? アンタの感情そのままの歪んだ面が大嫌いだ。
 「他の先輩とは違う」と云ったことがある。そりゃもうあの人はどれだけこのことを引きずっているか(当たり前といえば当たり前だが)。もっとも、私もこの件については若主人よりたっぷりとたしなめられたが。
なんというか、違うんだよ。上手くはまだ云えないけど。云えたところでどうなるわけでもない。先輩と後輩という‘業界の鉄の縦社会’既成事実は変わらない。

 さらに上の先輩がこう云った「アイツはまだ子どもやからな」。たしかにな。また別の先輩はこうもいう「大人の付き合いをしていかんとな」。この2人は、この春に会社を出て独立する。残される戦力は私と嫌いな先輩だけだ。私はまだひよっ子だし、正直、店側も恐ろしく心細いだろう。
私も協力してやっていかざるをえない。今さらフォローでもないが、心底悪い人ではない。私も先輩には一度以上は噛み付いている。少しは相手の気持ちもわからないでもない。課題はお互いの信頼関係を築くこと。そうでなければこの数少ない戦力で、仕事をやっていけるわけがない。私が後々店を出て独立するためには避けては通れない道である。
 ただ、もっと、先輩らしくドッカリと構えていて欲しい。自分独りだけ不幸の塊のような顔をしないで欲しい。ヘンな気遣いも要りません。