初仕入れ

 今日は朝から仕入れのための市。業者は通称で「会」と呼んでいる。それぞれの市の主宰者が「〇×会」と称していることが多いからだ。行ってみると、いかにも商売人の集まりらしい、と感じる。もっとも、私も業界に入って2年になるが、未だ完全には慣れていない。
 今回は先輩が声を出しても良いとこっそり許可してくれた。声を出すとは、商品を買うために競りに加わるということだ。よくある鮮魚や野菜の市場の競りみたいなものである(形式は他にもある)。実際、声を出すとなるとものすごく緊張するものである。スピーディに競りが進められている中、上手く声を出せるかという不安や失敗したらどうしようという慄きもある。体に余計な力が入ったまま、指定された商品が回ってくるのを待った。先輩に予算の上限を言い渡され、頭の中で軽くシミュレートする。大体のやり方は今まで(ボーッとしながらではあったが)眺めてきた記憶の中にもある。大丈夫だろう! と自らに言い聞かせてひたすら待つ。そして、商品がとうとう回ってきた。
会主「はい、¥3000から」 
私 「はいはい!」  (スタート価格の¥3000で買うということ) 
会主「はい、2人!」 (←同額で競っている人が2人ということ)
私 「4千!」
(僅かな沈黙)
会主「え〜どちらさんやったかな?」 (←声を覚えてもらってません)
私 「〇×です」          (登録している会社名です)

こうして初めての仕入れは無事に終わった。
ほんの僅かなやりとりではあったが、ものすごく緊張したのは言うまでも無い。

 これからも声を出す機会が増えてくると思う。そして指定された商品ではなく、自分で選んだモノを自分の責任で買う段階になるのも、そう遠い話ではない。