スーパー自慢コンボ

 ちょっとダラける夕方。若主人は休憩で消えている。他の人もバラバラで動いている。私はのんびりと商品の箱詰め・梱包を催事売り場の奥でやっていた。他には後輩とOBの業者、客が2人いるのみ。すると客の1人が
「菅 楯彦のリトグラフっていくらぐらいするん?」
という大きな声。OBに聞いているようだ。

あまり身なりのきれいな客ではないな。なんとなく職人っぽいけど・・・。
第一、菅 楯彦のリトなんてあるんかいな? ま、あっても関係ないし、やれやれだぜぃ。と思いつつ、OBとのやりとりを聞いている。すると話に興が乗ってきたのか、
「今は表具屋やってるけど、東山魁夷の一番弟子やねん。」

キターーーーー(;´Д`)ーーーーーー!!!!!

お持ちのモノのお値段を聞いてくる時点で既にヤヴァゲだったが、こうなるともう、100%ダメ。不可触人物。OBもそれを察したのだろう。なんとなく流し始めた。ところが、後輩はそれがわからない。客は、話に気のなくなったOBではなくまだわかっていなくてまじめに話を聞いている後輩をメインターゲットにしたようだ。

東京芸大。試験。修行。太平洋戦争。山本五十六の副官。隼戦闘機。宮本武蔵の子孫の何とかと知り合い。うんぬんかんぬん。
自慢コンボ、でました。
ひさびさやね、ここまでキレイに決まったのは。後輩よ・・・おつかれさん。
とどめは、(話の脈はぜんぜん知らないのだが)
「大阪のオンナはだからアカンねん」
「私は名古屋のオンナです!」
とりあえずこれで話は一段落したようだ。やっと帰る客。

 OBが「だから下手に質問とかしたりしたらアカンねん」とアドバイス
そういえば後輩は「お話ババァ」とか「能書きじじぃ」とかによくひっかかっていたなぁ。延々と付き合うのは時間の無駄だから適当に切り上げるんだが、慣れてない後輩はそれが難しい。それに最初から客を区別させるのも良くないことだから敢えて教えたりはしていない。


 こういう自慢・履歴話はよくある。それが買う客ならまだ我慢して聞いているが、買わない客となると聞くだけ体力と時間の無駄だ。
あえて言おう、カスであると。

なんで過去の栄光・輝かしい経歴にすがりたいのか。悪いが、老人や暇人の時間つぶしに付き合っている暇など、無い。どうも古美術の客には冷やかしが多い。町にある骨董店があれだけツッケンドンなのも分かる気がする。一種の防衛なんだろう。